『FAT WRECKED FOR 25 YEARS』at 幕張メッセ 感想

行ってきました、FAT WRECK CHORDS25周年イベント@幕張メッセ。

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FAT WRECK CHORDSとは、アメリカのメロコアの親分衆の1人であるNOFXの中心人物、ファットマイク(と当時の妻エリン)が立ち上げた音楽レーベル。所謂パンクロック、特にメロコアやポップパンクといったバンドを中心に展開されているレーベル。海外のパンクロックミュージックに興味ないとあまり聞いたことないかもしれませんが、意外と日本のパンクロック、特にメロコアのシーンに置いてはかなり重要な位置付けになると思います。
日本のメロコアの親分衆の1人といえば今回のイベントにも出てるハイスタことHi-STANDARDになると思うんですが、そのハイスタが爆発的に全国のパンクロック好きに広まったのはFAT WRECK CHORDSから『GROWING UP』がリリースされたり、レーベルから出るコンピに参加したりということが少なからず影響したのではないかなぁと個人的に考えています。
というのも、当時……90年代中期くらいでしょうか……その頃は邦楽のパンクロックといえばブルーハーツのようなバンドという印象が一般的で、メロコアというのは海外のNOFXRANCIDのことだと認識してた人が多かったと思います。自分みたいな高知の田舎でシコシコCD聴いてるだけの人間には、余計にそうでしたw そんな中で海外のメロコアを聴いているうちにFAT WRECK CHORDSといったレーベルがあることを知り、そこからHi-STANDARDという日本人のバンドがアルバム出したりコンピに参加したりしとるぞ、というのを見るわけですな。
勿論、ハイスタは当時から既にライブハウスなどで人気あっただろうと思いますし、いずれ世に広く知られるようになり人気が出て国内メロコアを拡めるバンドになったとは思いますが、それを初期に強く後押ししたのはFAT WRECK CHORDSであっただろうと思います。その後押しされたハイスタが中心となって、PIZZA OF DEATHが生まれ、AIR JAMが開催され、日本のメロコアシーンを活性化させたことを考えると、やはりFAT WRECK CHORDSの存在は大きかったのではないかなぁと思わざるを得ません。
と、まぁそんなFAT WRECK CHORDSの25周年のイベントがこの『FAT WRECKED FOR 25 YEARS』になります。
出てる面子がまた心憎い。
toyGuitar、Masked Intruder、The Flatliners、Western Addiction、Swingin' Utters、Snuff、Good Riddance、Strung OutLagwagonNOFXという向こうのFAT WRECK CHORDSに馴染み深いバンドに加え、日本のHi-STANDARD。そして、2012年に逝去したNo Use For A Nameのボーカル、トニースライのトリビュートしてやるセッションパートとして、TONY SLY TRIBUTE:No Use For A Name Cover Set。
これ、特に当時のメロコアを好きだったオッサンオバサンにはたまらない面子です。先程挙げたハイスタが参加したFAT WRECK CHORDSのコンピは『SURVIVAL OF THE FATTEST』と『Physical Fatness』になるのですが、これにハイスタと一緒に参加していたのがNOFX、Snuff、Lagwagon、Good Riddance、Strung OutNo Use For A Nameといったバンドになります。
11.14に同じく幕張メッセで行われたBRAHMANのイベント『尽未来際』でMONGOL800SCAFULL KINGCOCOBATHUSKING BEE、COKEHEAD HIPSTERS、SLANG、Hi-STANDARDBRAHMAN、に加えてSUPER STUPIDがサプライズ出演したこともあり、完全に「あの頃」の面子がメロコア/ハードコア好きの間で話題になりました。これも行きたかったのですが、その日は既にASPARAGUSdustboxのツーマン@F.A.Dのチケットを確保(前売ソールド)していたし、そちらも大変に楽しみだった為に断念。
まぁそんな尽未来際の面子と同じくらいに、このFAT WRECK CHORDSのイベントの面子もたまらない感触があります。特に、亡くなったトニースライのNo Use For A Nameのカバーセッションがあるのは言いしれぬモノがありますね。
そんなこんなの、いろんな気持ちを抱えて楽しみに向かった幕張メッセ。

相変わらず遠いなと思いながら電車に乗っていると、全体的に細身なシルエット、上着は黒レザーのライダースジャケット、足元はドクターマーチン、1人はモヒカンというガッチリパンクスの3人組が乗ってきて、午前中からこんなパンクス見るなんて、あぁ俺はFAT WRECK CHORDSの25周年に向かっているんだな……でも、パンクスがスタートの時間に間に合うように午前中からきっちり移動してるなんてなんだか変な感じだな、いやまぁ仕方ないけど……などと妙な感慨を覚えながら海浜幕張駅に到着。駅を降りると、幕張メッセに向かいそうな連中は朝からアルコールを摂取していて安心しましたw

序盤のtoyGuitar、Masked Intruder、The Flatliners、Western Addictionの4組は持ち時間30分組。
みんなよかったのだけど、中でも印象に残ったのは覆面バンドのMasked Intruder。ポップで綺麗な美メロとハモリのポップパンク。そんな楽曲と対照的にも思える、バンドのパフォーマー? が破天荒、且つコミカルに暴れ回るライブの様子は非常によかった。あれ? いなくなった? と思ったら、ファットマイク抱えて出てきたのはクソ笑ったw

中盤のSwingin' Utters、Snuff、Good Riddanceの3組は持ち時間45分組。
印象に残ったのはやはりSnuff。何度見てもダンカンのドラムボーカルって、もうそれだけでインパクトあるよね。勢いのある楽曲とスカの楽しさの相性は言わずもがなの素晴らしさ。ファットマイクや難波さんの乱入なのか招き入れたのかという場面もあり、フロアも非常に盛り上がりました。
余談だけど、ダンカンがSPREADのTシャツを着ていたの、SPREADファンとしてはアガる出来事だよね。本当にSPREADのこと好きなんだなぁと。SPREADとツーマンとかまたしないかなぁ。

そして、Strung OutLagwagonNOFXHi-STANDARDの4組は50分組。フェスで50分はなかなかしっかりした持ち時間。実際、4組とも人気実力共にヘッドライナーでもおかしかない……とはいえ、NOFXとハイスタはやっぱ凄かった……。
往年の名曲『LEAVE IT ALONE』や『don't call me white 』、オーシャンゼリゼRANCIDの『Radio』のカバーなど、バンドの好演にフロアもガンガン応えていくのだけど……やはり『Linolium』の爆発具合は凄まじかった。カリフォルニアメロコアの親分の風格を見せつけられました。
そして、実質的なトリのハイスタ登場。フロアはStrung OutLagwagonNOFXでライブイベントとして既に十分なクライマックスと言える盛り上がりを見せたが、まだまだこれからだと言わんばかりの雰囲気。
そんな雰囲気の中、始まった曲は『MAXIMUM OVER DRIVE』でフロアはぐっちゃぐちゃ。自分はしっかり見たかったので、そうなるであろうエリアから少し外れてポジショニングした筈だったが何度もふっ飛ばされるw ふっ飛ばされる度に微妙にポジショニングし直してたけど、その度に何度も何度もふっ飛ばされたw 嫌がらせを受けていた可能性もなくはないがw、そんなくだらないことではなく、いたる所でモッシュやサークルができるカオスな状況だったのだろう。で、それはメロディックハードコアの現場としては最高な状況だ。
次々と披露されるキラーチューンの中で、『MY SWEET DOG』『WAIT FOR THE SUN』『CALIFORNIA DREAMIN'』も披露される。FAT WRECK CHORDSのコンピ『SURVIVAL OF THE FATTEST』と『Physical Fatness』に収録されている曲ですな。『WAIT FOR THE SUN』ではファットマイクをステージに招き入れフロアも大シンガロング、『CALIFORNIA DREAMIN'』のエモさはフロアを休ませるどころか、一層もみくちゃにするよねw カリフォルニアで夢を掴んだとも言えるハイスタが、この曲をこのシチュエーションでやるのを見られる幸せ。
そして、FAT WRECK CHORDSという偉大なレーベルに感謝とリスペクトを込めて演奏された『STAY GOLD』。FAT WRECK CHORDSがなければハイスタはなかった、とMCで断言した彼らの今までの輝かしいキャリアの中でも頂点の楽曲と言える『STAY GOLD』は、更に輝いたように見えた。
からの、ラストナンバーは『CAN'T HELP FALLING IN LOVE』で締め。その楽曲同様の激しさと優しさが会場を包み込んだ中でハイスタのライブは幕を閉じました。
NOFX→ハイスタのライブが終わったフロアは正に死屍累々といった様相w 凄かったなぁ……。

で、最後の最後はTONY SLY TRIBUTE。それぞれいろんなバンドから入れ替わり立ち代わりNo Use For A Nameのカバー曲を披露。Snuffのダンカンがドラムナシでボーカルに入って、ドラムがないと落ち着かない、カラオケスタイルというようなことを言ったりw、和気藹々としていて凄くいい雰囲気でした。それを見ていていろんなとこで涙ぐみながら、例によって『SURVIVAL OF THE FATTEST』収録曲であり、個人的にも大好きな『Justified Black Eye』がボーカルファットマイク、演奏ハイスタというセットで最後に披露され、最高の締めくくりでイベントは終了。

10時間の長丁場、全てのバンドがパンクバンドで、見てる方もかなり疲れたけど、笑顔と感涙ばかりが溢れてくる素晴らしいイベントでした。
FAT WRECK CHORDSというレーベルの周年イベントのお祝い感と共に、この面子にNo Use For A Nameがいない寂しさもあったのだけど……出てくるバンドみんながトニースライへのリスペクトを口にしていて、その歴史の中でトニースライが如何に愛されていたかということがわかって、ファンとしても嬉しいイベントになりました。
FAT WRECK CHORDS、また周年イベントが日本で開かれる日があるといいなぁ……。