Gimme a Funky Punky Baby! SABANNAMAN『MAGIC MUTANT』感想

素晴らしい。

Magic Mutant

の、一言で終わらせたいぐらいよかった、SABANNAMANの1stフルアルバム『MAGIC MUTANT』。

このSABANNAMANというバンド、2012年に結成の20代前半の面々というから更に恐れ入る。
Dr:與那城直記
Ba:糸数航平
Vo:吉田涼
Gt.上田雄
という4人編成のファンク✕ヒップホップ✕ハードコアパンクのミクスチャーロックバンド、といえばわかりやすいか。
初めて見たのは、スサシことSPARK!! SOUND!! SHOW!! を初めて見たイベントと同じ、去年の10.18に中野MOONSTEPで行われたbe unconscious zizzのレコ発ツアー『Time After Time vol.9 -Alter, Encounter Tour FINAL-』だ。その日の自分のTwitterには「ファンキーに跳ねてる感じで素晴らしかった」と書いてあるだけで、詳細に何を感じてどう思ったのかはよくわからんw
が、とても気に入っていたのは間違いなく、年末の爆裂FxAxDのSABANNAMANの出番が大晦日で(自分が帰省するので)見れなくて、彼らの初期衝動コピー※を見られなかったのがとても悔しかった。何の曲をやったのか、もし話す機会があれば聞いてみたい。
※爆裂FxAxDは横浜F.A.Dで行われる年末の企画イベントで、各バンドの初期衝動となったコピーを披露する決まりになっている。去年は元SHERBETの岡田さんが所属するBLACK BUCKはSHERBETの『Summer Beach』をやってくれて、自分はいたく感動しましたw
年を明けてからも何度か見させてもらっていて、SABANNAMANというバンドを見せつけてくれた初台WALLのSABANNAMAN自主企画『Tell Me Africa』、沢山の客の中で嬉しそうに演奏する姿が印象的だった下北沢SHELTERでの『Scorebook #1』、WRENCHやNUMBといった歴戦のベテランバンドの中でも引けをとらなかった『PARTENON X』あたりが印象に残ってる。

そして、この1stフルアルバムである。
スケートパンクといった言葉からイメージされるようなスピーディなハードコアパンクを基調に、ファンクやヒップホップ、90年代のオルタナティブロックの要素を吸収して、堂々とSABANNAMANの音として出力されている。
たとえば、YKZ。たとえば、RAGE AGAINST THE MACHINE。彼らはハードコアパンクでありながら、ファンクであった偉大な先達のバンドだけども、圧倒的なヘヴィネスを伴いながら、何より秀逸なポップミュージックでもあった。SABANNAMANも……みんなにとってどうかはわからないけど、少なくとも自分の中では……そこに続くバンドであると思う。そう思わせてくれる1stフルアルバムになっている。

アルバムは、ハードな感触ながら、スピードアップした間奏部のアコースティックギターの美しい旋律が印象的である『GNUS ON PARADE』から幕を開ける。先行としてMVが公開された曲でもある。
続くのは、前につんのめるかのようなスピード感がかっこいい『Good Vibration』でグイグイとテンション上げてくる。この曲はシングルとしてタワレコなどで無料配布され、後にIMCなどで無料ダウンロードもされた曲だが、改めて聴いてもやはりかっこいい。ここまでの2曲はWebで気軽にアクセスできるので、聴いてみてほしい。
3曲目は『Freak Out』。ダンスホールで演奏するファンキーなハードコアパンクバンドというイメージそのままな仕上がり。ギターソロにアガること間違いなし。
唸るベースとギターの絡みが気持ちいい『THE HARTMAN』が4曲目。ハートマン軍曹……?
続く、エモーショナルなシャウトが印象的な『FUNKAMAN』と、駆け抜けるようなスピード感が爽快な『SPICE OF  YOUR LIFE』は、彼らの自主制作e.p『GNUS ON PARADE』にも収録されている曲。どちらもよりパワーアップされていて、短い期間にグングンとレベルアップしてることをまざまざと感じさせられる。
楽器隊のジャムセッションのような『JAM』を挟んで、8曲目『to fun to enjoy』。ライブでも盛り上がる飛び跳ねるような躍動感溢れる曲。ライブでも好きな曲なだけに音源化がとても嬉しい。ポップさとハードさの塩梅が絶妙で素晴らしい。
GET WILD』も自主制作e.pに入っていた曲。スピード感のある「Hey! Get! Wild!」という掛け声が勢いがあってかっこいい。
10曲目『We Are The Alright』は、まじないのように繰り返す「We are the alright」の部分がDUBのような表情を見せていて、面白い。
『Happy Youth』は第二弾無料配布シングル。高い音を中心に据えたギターが印象的で、曲のうねり方が気持ちよく、聴いてる方のテンションをハイに入れていく。
そして『DAYS』。ここまでハイテンションに疾走感と躍動感を前に押し出した曲が続いたので、ここらで箸休めタイムなのかなという感じなのだけど、この曲に関しては、ある意味では箸休めにはならない……つまり素晴らしい曲。自分はライブで見たのが先だったけど、音源で改めて聴いてもやはり凄くいい。正直、イントロのギターリフだけでもう掴まれる。サビも優しく響く、心地よい名曲。
13曲目『Yism』は普通に笑ってしまったw この曲はあえて何も書かない方がいいだろうw かっこい〜w
『This is most Funkness Festival』、お祭りDA!!!
『SABANNA PARTY TIME』、パーティDA!!!
という14曲目・15曲目は、これがSABANNAMANの真骨頂かと思わせてくれる疾走感と躍動感。これも、どちらも自主制作e.pからの新録だが(『This is most Funkness Festival』はタイトルが変わっている)、やはりかっこいい。
ラストの『AROUND THE WORLD』は、歌も演奏も力強く、美しい、アルバムのラストを飾るのに相応しい曲になっている。SABANNAMANという言葉から想像させる疾走感と躍動感とはまた違った、しなやかさというようなモノを感じさせられる。ライブで聴いてみたい。
といった感じの16曲、40分弱。非常にいいアルバムでした。個々の曲は勿論、アルバム全体としての流れもよく、聴き終わった時の満足感も高い。

親しみやすいラップと時折エモーショナルな表情も見せるボーカル、激しさの中にポップさと美しさを兼ね備え曲をグイグイとリードするギター、そんなボーカルやギターにも負けずに唸り主張しながらしっかりとしたベース、そんな三者をまとめ上げ支えつつも力強いドラム、それぞれがバンドとして噛み合いSABANNAMANの音を作り上げている。
普通に若い子にウケる音楽だと思うけど、SABANNAMANの強味はオッサン・オバサンにも訴求力が高い点だ。特に90年代に所謂ミクスチャーやハードコアパンク、または当時オルタナと呼ばれた音楽を聴いてきた人たちにこそ、一度聴いてみて欲しい。
ポイントなのは、当時の音楽の懐古趣味ではなく、当時の音楽をちゃんとSABANNAMANなりに消化して、SABANNAMANとしての音を鳴らしている点だ。彼ら自身はまだ若いし、当時のバンドをリアルタイムで見てきたわけではないだろうから、ある意味当たり前といえば当たり前かもしれないが。2015年現在、20代前半の彼らが、どうしてあの頃の音楽を熱心に聴き、こういった音になるに至ったのかはわからないがw、まぁそういうこともあるだろう。なんにせよ、いいバンドであるのは間違いない。彼ら自身が彼ら自身の衝動に突き動かされてこの音楽が作ってきたから、自分みたいなオッサンにも「懐かしい」というだけではない魅力を感じさせるのではないだろうか。

本当にいいアルバムになってると思います。
『GNUS ON PARADE』はMVとしてYouTubeにありますし、アルバムの試聴Trailerもあります。また、最近はCDはちょっと……という方も、配信もしてるようなので興味がある方は是非。
ライブも、フェスはBAYSIDE CRASHや京都大作戦の前夜祭、KITAZAWA TYPHOONの出演などが決まっており、このアルバムの全国的なレコ発ツアーも順次追加中とのこと。沢山ライブをやってるので、いっそのこと、音源より先にライブを見てみるというのも手です。
SABANNAMAN、オススメです。