Skankin' Sapphire! 『トゥッティ!』とスカパンク

京都アニメーションの『響け! ユーフォニアム』のエンディングの曲がスカパンク調で、更にキャラにスカダンスを踊らせていて、踊っているキャラの緑輝(さふぁいあ)ちゃんがスカパンク/スカコア好きなんじゃないかと俺の中で話題。
スカパラの曲に『サファイアの星』という、Charaが歌った曲があるが、特に関係はないと思う。
スカダンスとは、たとえばライブでスカバンドの演奏に対して客の反応するダンスのこと。ンチャンチャというスカで多用されるギターの音が鳴った時に踊ることが多いかな。
スカパンクは日本でわかりやすいのはSNAIL RAMPか。雑に言うと、メロディック・ハードコアとスカを掛け合わせたような音楽がスカパンクと呼ばれることが多い。
ここ4,5年でスカパンクに接近したアニソンが増えたように思う。そういったことを交えながら、スカダンスを踊っちゃう緑輝ちゃん可愛いという話をしたい。

元来、スカはパンクと相性がよい。
所謂“Authentic”はそのルーツがジャマイカであり、ジャズやR&Bの影響がうんたらかんたらとあるけど、その次の世代の「2トーン」、ここから既にパンクと交わる。SPECIALSやMADNESSといったバンドだ。
当時、70年代後半に隆盛したパンクと60年代のモッズに愛されてきたスカを合わせることで生まれたのが2トーンスカ。2トーンは白人と黒人が交わることからきているとのこと。白黒の市松模様がスカの象徴的な柄になっているのはここから。当時、イギリスは不況と難民流入によって差別が激化した時代。状況と文化の交錯で、音楽にはそういう化学反応が生まれたのかなと思う。2トーンスカを愛したスキンズが、人種差別のイメージがついてるのは皮肉に感じるけれど。
パンクバンドのTHE CLASHの79年発表の『LONDON CALLING』にはスカを取り入れた曲がある。このへんを見ても、パンクとスカの距離感の近さを当時を知らない自分でもなんとなくわかる。これが後のスカパンク/スカコアの萌芽に繋がっていく。
87年にOPERATION IVYが結成され、89年にはTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONESがデビューする。今のスカとメロコアやハードコア、ミクスチャー要素の混成がスカパンク/スカコアというスタイルになってきたのはこの頃ぐらいからと言われている。OPERATION IVYのティムとマットはみなさんご存知のRANCIDRANCIDはCLASHへの敬愛を隠さないし、HELLCATの設立などスカへの愛情が深く、個人的にRANCIDは今のスカパンクを確立した神様になっている。
周辺のパンクバンドもスカパンクには馴染み深いバンドも多い。NOFXのアルバムにスカが入ってないことは珍しいし、THE OFFSPRINGの『What happened to you?』はあまりにも名曲。そんなこともあってか90年代以降、スカパンク/スカコアシーンは日本の地から見ても盛り上がっていく。
NO DOUBTやSave Ferris、先日来日したVOODOO GROW SKULLS、スカパンクイベントのバンドの入れ替わり時間に必ずと言っていいほど一曲は流れるSUICIDE MACHINES、フジロックで大サークルモッシュを作ったLESS THAN JAKE。初期にRANCIDのティムとマットが関わっていたというDANCE HALL CRASHERSも素晴らしい。自分がこういったバンドを知ったのもRANCIDの『...AND OUT COME THE WOLVES』からだから、95年だ。
で、時を同じくして90年代の日本、ハイスタが出てきて、BACK DROP BOMBが出てきて、ヌンチャクが出てきて、山嵐が出てきて、メロコア/ハードコアの隆盛の流れでスカパンク/スカコアも世に出てくるようになった。ユアソンのJxJxさんがやってたFRUITY、去年音源とライブDVDが発売されたLIFE BALL、いまや日本の代表的スカパンクバンドになったKEMURI、スマッシュヒットを出したSNAIL RAMPPOTSHOT、そのPOTSHOTのRYOJIさんと組んでtv-freakを設立したPANICさんのYOUNG PUNCH、今もたまにやるライブがチケット即完するSCAFULL KING、他にもCOKEHED HIPSTERS、RUDE BONES、GELUGUGは今も色褪せないスカコアバンドだし、こないだ復活したDUCK MISSILEはいまだに切れ味抜群、現SUNSET BUSのメンバーは当時は3.6MILKとして活躍、小島は映画『犬、走る』のサントラにも参加してたな……名を挙げればキリはないが、この頃に活躍したスカパンク/スカコアバンドには、当時、自分も夢中になった。
その頃に同じような体験をした人たちが、今、アニソンを作ってる人たちの中にも当然いると思う。そういうことをここ4,5年くらいで特に感じることが多くなった。
自分が最初にそう思ったのは『WORKING!!』の『SOMEONE ELSE』だ。「サムワン」「ワンワン!」と始まる可愛い曲だが、その後にご機嫌なホーンの旋律を披露し、最後にはドラムはスタスタスタと速いリズムを刻んで非常に激しい展開に至る。可愛く仕上げてるが、これはスカパンクだ! となったのをいまだに覚えている。『アイカツ!』の『ダイヤモンドハッピー』もそう。こっちはイントロの「チャンスチャンスウォーオーオー」の後すぐにスタスタスタとドラムが速いリズムを刻み、ご機嫌な旋律をホーンがキメて初めから炸裂してスカパンクであることを隠そうともしない。いや、元々隠そうとしてたわけではないだろうがw
まぁそんなことで、たとえばこれらを往年のスカパンクバンドの人が作りましたと言われたら信じてしまうだろうと……そう思わせるエッセンスがこういった曲には散りばめられている。
ちなみに『SOMEONE ELSE』は神前暁さん、『ダイヤモンドハッピー』は石濱翔さんの手によるもので、どちらもMONAKA所属である……化物アニソン集団め……!
また、神前さんは『波打際のむろみさん』のオープニング、変態的スカコアナンバー『七つの海よりキミの海』も担当。本当に化物……!
あと、あの頃のスカパンクという感じはあまりしないが、『となりの怪物くん』の『Q&A リサイタル!』も良ナンバー。UNISON SQUARE GARDENの田淵さんによるスカパンク調のナンバーで戸松遥さんが歌ってる。
というような曲が、個人的なスカなアニソンの好きな曲だったのだけど、今季、そこに堂々と割って入ってきたのが『響け! ユーフォニアム』の『トゥッティ!』である。
トゥッティ……tutti……イタリア語で合奏の意味らしく、歌詞なども原作に沿った雰囲気にされている。作詞・作曲はZAQさん。イントロは自分の中ののアニソンのZAQさんのイメージそのままな歌い出し……問題はその後。
ウォーオーウォーオーと歌った後、ドラムがスタスタスタと速いリズムを刻むAメロに入ったぐらいに、あれ、これは? と思ってたら、Bメロで完全にスカパンクな掛け合い! これ、POTSHOTじゃないか! となったわけです。
というのも、ウォーオーウォーオー歌うのはPOTSHOTの十八番なんですよ。ライブでも半分自虐ネタなんだと思うけど、RYOJIさん自ら「ウォーオーウォーオーの時間です」というようなMCする程に、POTSHOTといえばウォーオーなスカパンク。勿論それは彼らの上質なポップさがあればこそ成立するんですけども。スカパンクのメロディの気持ちよさのイメージの中核バンドの1つにPOTSHOTは確実に入っている。
『トゥッティ!』も、その気持ちよさを受け継いでいる。疾走感とホーンセクションを被せた力強いサビはまさにスカパンクの気持ちよさに通ずる。ZAQさんなりの味付けのスカパンクで、吹奏楽のお話である『響け! ユーフォニアム』にもピッタリな青春パンクな匂いのする良質なアニソンに仕上がっている。

ZAQさんもPOTSHOT好きなのかなぁとか、そんなことを思いながら何度もエンディングを見ていたある日、そのウォーオー歌う箇所で、緑輝ちゃんがみんなと走っていると見せかけてスカダンスを踊っている、という絵を箇所を発見。ZAQさん、エンディングスタッフ、お前ら確信犯か。
掛け合いの時の背景の絵なんかはスカパンクな絵のテイストに近いイメージだし、ちょくちょく出てくる市松模様は先に書いたようにモロにスカの象徴的な柄である。
これはもう、これを作ったアニメスタッフはスカパンクバンザイ! スカパンク最高や! と言っているに等しい、と勝手に判断した。判断したったら判断した!

スカダンスを踊っていることは22日ぐらいにTwitterで軽く書いて、他にも書いてる人いないかとTwitter検索したんだけど、意外と少なく……見てる人思ったより少ないのかなぁなんて思ってたんだけど、こないだ連休に友人と遊んだ時にこの話をしたところ、そもそもスカダンスを知らんと言われた。あっ、そういうこともあるかとその時に気づいた。
先日、イベントで緑輝ちゃんはスカダンスをしてるという話は明かされたらしく、アレはスカダンスだったことが正式に認められたんだけど、そのことを書いた記事ではそれしか書いてなくて、それだけではあの曲でスカダンスしてることの面白さは伝わらんぞと。そういうわけで、こういったことを書いてみることに。
元々わかる人だけわかればいいってネタなので、こういうことをつらつら書いて、その面白さが伝わるとも正直思わないんだけどw

最後に、スカパンク/スカコアシーンは以前と比べると下火ですけども、今も立派に存在しております。あの頃と相対的に見て下火とはいえ若い元気なバンドは沢山いますし、HEY-SMITHという今後のスカパンク/スカコアを支える旗手になりえるバンドもいます。一度ライブに来てみませんか。
個人的には、まず体験してみるのはKEMURIのライブがいいかと思われます。もしくはPOTSHOTのRYOJIさんが今やってるバンド、RYOJI & SKA PUNK ZOMBIES。『トゥッティ!』『ダイヤモンドハッピー』『SOMEONE ELSE』を好きな人はこの2つのバンドのライブは絶対に楽しめることを保証します。
とりあえずライブに来てスカパンクを感じてもらうのが、スカパンクスカダンスがどういったものなのか一番わかりやすいと思います。是非。